歩くことで、問題の解決策が見つかることがあります

人生の最後のときまで、健康で幸せに暮らし続けることを願う人々が増えています。

長く続けられる健康法に、ウォーキングがあります。
歩くことで身体を健康に保てるばかりか、脳を活性化する瞑想法としても
効果を期待できます。

李承憲氏が、ウォーキングをするときに
合わせてやってみるといいことを教えてくれています。

「心の中に溜まっているストレスや考え事を声に出して言ってみます。
周りに誰もいないときは、大声で気が済むまで言い続けましょう。
周囲の木々や草むらに話しかけているように、自分のすべてを率直に
吐き出します。
 自分がなぜ落ち込んでいるのか、なぜ浮かない顔をしているか、
その原因がわからないとき、この方法を活用すると、原因と解決策を
見つけることができます」

李承憲氏の説明のように、歩く瞑想法を実践しながら、
溜まっていることを声に出して言ってみてください。
それによって今まで思いもつかなかった解決策が得られることもあるかもしれません。

一指 李承憲(イルチ イ・スンホン)著  『ジャンセンウォーキング』 講談社、2008年発行、130~140ページより引用

歩くことは誰でも続けることができる瞑想法です

歩くことは、年齢や性別、そして運動経験の多さに関係なく
誰でも実践できる健康法です。
身体にとってよいだけではなく、心にとっても
効果的な瞑想法となります。

李承憲氏が、効果的な歩き方をこう説明しています。

「視線は鼻先に意識を集中し、3~4歩先の地面を眺め、精神が乱れないようにします。
普通、歩調に合わせて呼吸を調節しますが、2歩もしくは3歩ごとに息を吸ったり吐いたりします。
この方法で歩くと、どんなに長く歩いても疲れを感じません」

歩くことに慣れていない人は、「少し歩くだけでも疲れてしまう」と
尻ごみをするかもしれません。
でも、歩き方を工夫するだけで、疲れを感じずに長く歩くことができます。
そして、適切に歩くことによって、健康が改善されるだけでなく、
脳が活性化され、とてもよい瞑想法にもなります。

李承憲氏の言葉を参考にして、たくさんの方々に
歩く運動法・歩く瞑想法を実践していただきたいと思います。

一指 李承憲(イルチ イ・スンホン)著  『ジャンセンウォーキング』 講談社、2008年発行、
139ページより引用

十年は若返る李承憲氏の健康歩行法

歩く姿勢を見れば、その人の健康状態がわかります。

体の弱い人や健康状態のよくない人は、ほぼ外股で歩きます。一名*ヤンバン(両班)歩きとも言われる外股歩きはエネルギーがスースーと漏れる歩き方です。つま先を外側に開いた状態で歩くので、自然にかかとに体の重心がのせられ、腰に力が入るようになります。この姿勢で長く歩くと、股関節が歪み、椎間板ヘルニアか腰痛で筋肉や骨に無理をきたし、体形が変形するようになります。

また、エネルギーの通り道である経絡が詰まってしまうため、血液循環を始め、脳脊髄液の流れがスムーズに流れなくなります。この状態で長く歩けば歩くほど、頭は重くなり、疲れてきます。また、足に痛みを感じたり、ひどい場合には足にけいれんが起こったりもします。

それなら、最も理想的な歩き方は何でしょうか。大体、気力が充満している人は、両足のつま先を数字の11の形にそろえ、両膝が軽く擦れるように歩きます。つま先をそろえると、足と下腹部の丹田に力が入り、背中もまっすぐに伸びるようになります。脊椎が正しくなると、人体のエネルギーと血液の循環が円滑に行われ、消化や排泄能力が向上し、脳脊髄液の流れが良くなり、頭がさえてきて、頭の回転も速くなります。

仙道トレーニングを始めとする丹無道、合気道、テコンドーなどを、長い間鍛錬してきた上級者たちは、普段歩くときもエネルギーが分散しないよう、気をつけながら歩きます。つま先をそろえて、数字の11の形でまっすぐ足を踏み出すのです。「数字の11歩き」は人体に流れている気の流れをつかさどる歩き方で、ジャンセンウォーキングのもっとも基本となる歩き方です。数字の11歩きが習慣になると、膝が丈夫になり、足に力がつくだけでなく、日常生活でもあまり疲れを感じなくなります。また、正しい姿勢で歩くので、全身の動きに無理がなく、血液循環がスムーズになり、体がますます軽くなって、歩くことにも自信が出てきます。

正しい歩き方は人を美しく元気にさせます。自己管理を徹底的に行った人は、七十歳になっても背筋がピンと伸びており、歩く姿勢も整っています。実際の年齢より若く見える人、年を取っても情熱と覇気にあふれている人は、言うまでもなく皆が数字の11歩きで歩いています。数字の11歩きで、尾てい骨を少しまるめれば、命門のツボ(へそから腰の後方へまっすぐのばしたところ)が中に入ることにより、立った姿勢はもちろん座っている姿勢までも垂直になり、しゃんと伸びます。腰がまっすぐ伸びていれば、腎臓の精気が充満し、疲れを感じず元気旺盛に活動することができます。

これからは、足をきちんと数字の11の形にし、ゆっくり歩いてみてください。歩くときは、自分の歩き方にだけ集中します。数字の11の形につま先を揃えるだけで、足と下腹部の丹田に、力が入ってくるのを感じることができます。しゃんとして歩けば、歩くたびにエネルギーが蓄積され、健康になるのはもちろん老化を防ぐこともできます。仕事中に疲れて力が出ないとき、ひどい頭痛のとき、初期の関節炎のとき、こういうときはつま先を数字の11の形に揃えて、湧泉と足の指をぎゅうぎゅう押しながら歩いてみてください。特別に薬を飲まなくても、症状が大幅に好転することを実感することができます。

*ヤンバン-高麗・朝鮮時代の支配階層。朝会のとき、南向きに座っている国王を中心に、文班は東側に、武班は西側に立っていたが、この二つの班列のことを両班と言う。

一指 李承憲(イルチ・イ スンホン)著  『ジャンセンウォーキング』 講談社出版、2008年発行、112ページより引用